2016年3月5日土曜日

てのひらの熱を × 「どんな努力でもできる」と思えるには

本気で楽しんだ経験はありますか?


「上達するためならどんなキツイ練習もしてやる!」
好きなスポーツやゲームをしているときなんかには特に、そう思える瞬間がたくさんあります。
あなたのまわりにも「なんであいつはあそこまで練習できるんだ?」と思えるような人がいたと思います。プロスポーツ選手の練習風景を取り上げた映像なんかでも、それは思えますよね。

「どんな努力だってできる!」

そんな、最高のモチベーションを呼び込むための「フロー理論」というのをご存知でしょうか?
アメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイという方が提唱しているもので、「フロー」というのは、最近よくスポーツの世界で使われる「ゾーン」と同じものです。

ものすごく良い集中状態で、びっくりするような結果が出るとき、スポーツ選手はその「ゾーン」の状態に入っていると言われています。

そんな「ゾーン」状態を作り出すための理論が、「フロー理論」です。

何が大切か? をひと言で表すのは無理があるのですが、ポイントだけをいうなら、

「その人にとってちょうどいい難しさの課題に取り組み、それを達成する(成功させる)」

ことだそうです。
…イマイチ言葉だけだと何のことかわからないですよね。
『ちょうどいい』っていうのはどういう状態だ! と物が飛んできそうな表現ですし(笑)


今回はそれがわかる、週刊少年マガジン2016年14号掲載、『てのひらの熱を』 第6話「部内戦【決着】」のシーンをご紹介したいと思います。



■ 初めて取った1ポイント。それは偶然? それとも…
(※ 以下に掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります) 

『てのひらの熱を』の主人公である木野下 慎也(きのした しんや)は、『伝統空手』の試合に臨みました。

空手初心者の慎也にとってははじめてのきちんとした試合、相手は経験者です。
普通に考えれば何もできずに終わってしまってもおかしくはない状況で、実際、その試合は慎也のコールド負けで終わってしまうのですが。

彼の持ち前の集中力と立て直しの力、そして偶然の力が加わり、慎也は相手から『1ポイント』を取ることに成功したのでした。

慎也に1ポイントを取られた相手、甲坂 吉平(こうさか きっぺい)は不機嫌でした。

しかしその理由は「ポイントを取られたから」ではなく、「やってはいけないポイントを渡してしまったから」でした。
なぜ「やってはいけないポイント」だったのか? まわりにはそれは理解できないことでしたが、まわりはそんなに気にすることなく、試合は進んでいきます。

慎也の試合も進んでいきますが、
さっき取れたはずのポイントが、なぜか、なかなか取れません。

吉平は慎也に対して冷たく当たってはいるものの、嫌いというわけではなく、むしろ認めているくらいでした。

それでも、吉平は慎也には「ポイントを与えてはいけない」と考えます。それは、吉平の経験からくる結論でした。

「俺が空手を始めたのは7年前。人生、半分空手だ」

「初めての組み手は2コ上に何もできず、敗け。その次も、その次も」
「敗ける度に稽古を積んで、積んで」
「その果てに、たった1ポイントがあった」
「初めてのポイントってのは、『誇り』だ。それなのに」
「その重みを知る前にポイントを奪っちまったら、『誇り』にはなり得ないだろ」
「あんなトントン拍子で上手くいって、苦しみも喜びも知らねーままなんて」
「空手… ナメちまうんだろーな…」
そう考え、不機嫌になっていた吉平。

そんな不機嫌な空気を全く読まずに慎也は、能天気な雰囲気でアドバイスを吉平に求めてきました。
それを聞いて、『すでに』ナメてしまっているとさらに不機嫌になる吉平(笑)

無視しようと慎也を無理矢理振り払おうとしますが、意外にも慎也は強く食い下がります。
「嫌です」

「だって! 突きの感触?っていうんですか?凄かったんですよ!」
「ほんの一瞬だったんですけどね! 当たった訳じゃないのに、ズバーッと! こう! なんですかね! あれは!!」
「きっと一生、忘れない!」

そのひと言に、驚く吉平。
慎也が空手をナメていたのではなく、「どうせわからない」と自分が相手をナメていたことに、彼は気付きました。

そして、吉平は慎也にアドバイスを送ります。
「まぐれじゃない」
「誇れ、あの1ポイントを」
言われた瞬間には、理解できない慎也でしたが。

吉平の言葉を反芻して、心に浮かんでくる感情がありました。
「『まぐれじゃない』か。 嬉しいな」
「自信を持っていいのか」
「あれは自分の力で奪ったポイントなのか」

そう感じた途端、慎也の動きが良くなります。
それは迷いがなくなり、自信がついた証拠でした。

そして、ポイントを奪ることに集中し始めた慎也。
それを見て、改めて吉平は思いました。

「慎也が空手ナメてた、ってのは本当だったな」

「筋トレや基本練習が楽しい? ちょっとずつ成長する喜び?」
「空手のおもしろさ、ナメんじゃねーよ」
「ここだ」「これだ」
予感と確信を感じて、ゾクゾクする慎也。


「この感触だ」
「この感触のためなら、なんだってできる」

「ようこそ」
慎也は、全身でその『楽しさ』を感じ取ったのでした。



■ 慎也が持った、吉平が持たせた、『誇り』の大切さ

この話を読めば、この先慎也がどんなに苦しい状況になったとしても、つらい練習があったとしても、きっと努力するんだろう、って思えますよね!
それぐらいに、いいシーンだと思います。

最高のモチベーション、自分も欲しいですよね!
そこで、話を「フロー理論」に戻しつつ、シーンを振り返りたいと思います。

上でご紹介した通り、最高のモチベーション状態である「フロー」の状態にするポイントは、「その人にとってちょうどいい難しさの課題に取り組み、それを達成する(成功させる)」ことでした。

おそらくこの中で一番最初に引っかかるのは「ちょうどいい」という部分だと思います。
正確に捉えているようで、すごくアバウトな表現ですよね(笑)


「ちょうどいい」というのは、取り組んでいる課題が自分にとっても簡単ではなく、また有する能力を高いレベルで発揮しないといけないような場合を指します。
(「ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足」(深田浩嗣 著、ソフトバンククリエイティブ)から引用)


「フロー理論」をわかりやすく説明してくれている書籍からの引用です。
簡単にいうなら、「難しいけど、自分の力でなんとかできる(かもしれない)レベルの課題」という感じでしょうか。

フタ付きの瓶のフタがなかなか開かないんだけど、もうちょっと頑張れば開きそう! っていうフタが開いたときの、あの感覚がそうかもしれませんね!
…例として正しいかわかりませんが(笑)

慎也にとっては、「経験者相手からポイントを奪る」というのが、『ちょうどいい』課題だったのだと思います。

空手の初心者で素人である慎也ですが、姿勢の正しさからくる「立て直しの早さ」や「集中力」という武器を持つ彼なら、同じ素人からはポイントは簡単に取れてしまうけれども、経験者相手ではなかなかそうもいかない。
自分の「武器」を最大限に活かさなければ、結果には届かないという、『ちょうどいい』課題でした。


では、『難しさ』だけがちょうど良ければいいのでしょうか?
実はそうではありません。

もうひとつ、大切なのは『自分の力で』という部分です。

ご紹介した漫画のシーンで一番印象的な部分は、もちろん一番最後の慎也がモチベーションが上がるシーンになると思いますが。
もうひとつ自分は、慎也の動きを良くした『吉平のアドバイス』のシーンもとても印象的でした。

吉平が言った、「まぐれじゃない、あの1ポイントを『誇れ』」という言葉。

この言葉のおかげで慎也は、「嬉しい」「自信を持っていい」と考えることができ、迷いがなくなり、動きが良くなりました。
…いいことずくめですね(笑)

それだけ、難しい課題を「自分の力でできた」と感じるのは大切なことなのです。
(ちなみに英語の「pride」は日本語では「誇り」と訳されますが、英語の「pride」の方が、ここでいう「自分の力でできた」という喜びの感情に近いそうです(「脳には妙なクセがある」参考)。そう考えると、吉平が使った『誇り』という言葉は、実はかなり的確なものだというのもわかります。)

上の引用で使った「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」という本の中でも、「有能感」という言葉で、内発的動機づけ(お金などの報酬ではなく、自身の能力向上などを目的とすることでモチベーションを上げる方法)を高める要素のひとつとして、紹介されています。

実際、目の前の自分のハードルを他人にクリアしてもらっても、「嬉しい!」という感覚は一切起こりませんよね(笑)
それは、こういったことが原因なんだと思います。

子どもが「自分でやろう!」と必死に頑張っているところに大人が手を出してしまって、そのせいで子どもが拗ねたり泣いてしまったりするのも、こういう部分が大きいのかもしれませんね!



「その人にとってちょうどいい難しさの課題に取り組み、それを達成する(成功させる)」
ポイントは「課題の難しさ」と「自分でできたという感覚」。

ご理解いただけましたでしょうか?

自分の経験でも、過去『楽しかったゲームが急に面白くなくなった』ときというのは、

「相手が強すぎてどうやっていいか全くわからない」
「上達し過ぎて簡単に思える」
「自分の力ではどうしようもない」

というものがほとんどだったように思えます。ついこの間も、超楽しんでたゲームが楽しくなくなったのは「実力を示す数値の上下が、自分の意思や練習では上がらなくなった」からでした。
(時間を忘れて休日には半日以上やっていたゲームなのに、それを感じた瞬間にぱったりと辞めました 笑)

それでも、友人から「さらに難しい縛りやルールを加えた楽しみ方」や「どうにかするための知識や練習方法」を教えてもらえたりすると、また急に面白くなったゲームもたくさんありました。

工夫次第で、目の前の「楽しくないこと」は楽しくできる可能性がある、ということですよね!


あなたが、楽しいはずのことをやっているのに「楽しい!」「もっとしたい!」と思えなくなったとき。
もしそれが「ホントはもっとしたいのに!」と感じるものなら。

このシーンと知識を、ぜひ思い出してみてくださいね!



記事を最後までお読み頂き、ありがとうございました!!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)

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