2016年2月7日日曜日

AIの遺電子 × 笑顔は何のため?

なぜ、人は笑うのでしょうか?

…あんまり普段から考えることではないテーマですが(笑)


TVを見てたり人と話したりしているとき、あんまり笑いたいような気分でもないときでも、なぜかふっと笑顔が出てしまった…そういうことは、意外にあると思います。

そんなときはもちろん無意識ですが、自分がなぜ笑っているかはわからないと思います。

今回はそんなときの気持ちがわかるような、週刊少年チャンピオン2016年10号掲載、AIの遺電子 第12話「俺の嫁」のシーンと、笑うことについてご紹介したいと思います。



■ 「恋人」ロボットを買った青年の物語。
(※ 以下に掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります) 

「AIの遺電子」の世界は、現代よりも少しロボットや人工知能、脳科学などに関する分野などが発達した世界です。

その世界では、人間の姿をしたロボットがしばしば、愛玩物として作られていました。

今回の第12話は、そんなロボットのひとつ「恋人ロイド」を購入した青年、タクヤのお話です。


その「恋人ロイド」は体だけではなくふるまいも人間じみていて、時には主人の要望に応えなかったり、機嫌を損ねたりもします。

そんなカレンを見ていると、まるで自分の気持ちがあるように感じたタクヤは、「彼女とヒューマノイドの違い」が気になり、ヒューマノイド専門の医者に相談へ来ました。

ヒューマノイドの頭は、人間の脳の神経回路をそっくりマネして作られているため、この世界では人間と同じような扱いをされています。

しかし「恋人ロイド」は商品としてデザインされたもののため、「脳の知見」を活かしつつ人間に都合がいいように作られているはずで、そこが違うということでした。

「彼女には自分の気持ちがあるんでしょうか?」

タクヤのその問いに対する医者の見解は、「カレンが怒ったりするのは青年の気を引くため」ということでした。

タクヤが笑って暮らしていれば、彼女もハッピーに感じるように「作られているはず」。
それが医者の結論でした。


それを聞いたあとでも、彼女を大切にしようと考えたタクヤは、カレンを喜ばせるため、カレンを人間に近づけるために、仕事を掛け持ちしてお金を稼ごうとします。

しかしやがて彼は、「カレンが人間になりたがっている」のではなく、「自分がカレンを人間にしたがっている」のだということに気づきました。

そんなある日、青年は無理な労働がたたり、体調不良を起こして倒れてしまいます。

入院を余儀なくされたタクヤは、カレンへの連絡手段がないままに、一週間を病院で過ごすことになりました。

そして退院後。
連絡のできなかったカレンが一体何をして過ごしているのかが気になったタクヤは、帰宅後こっそりと、部屋を覗いてみます。

カレンは、タクヤらしき人物が笑っている絵を、必死に、たくさん描いていました。

それは「主人(=タクヤ)」という存在目的が突如消えたという、その状況に対しての、彼女なりの対策のようでした。

帰ってきたタクヤを見つけた彼女は、喜び、彼に抱きつきます。
しかし、カレンの様子を見てしまったタクヤは思うところがあったようでした。

「人間じゃないことは確かなんだ。でもただの機械とは思えなくて…」

そう相談するタクヤに、同僚は「深刻に考え過ぎ」だと言います。

家に帰ると、カレンが笑顔で迎えてくれる。
そんな彼女に、「ただいま」と言って、ほほえみかえす自分。

自分が微笑みかえすのは…何のためなのでしょうか?



■ 自分が笑顔で返すのは、何のためか?

自分で買った、「恋人ロイド」というロボット。
だから、頭では彼女は「人間ではない」ということもわかっている。
でもそんな彼女のために必死で働く自分がいて、家に帰ると笑顔で迎えてくれる彼女に微笑み返す自分もいる。
それは、何のためなのか?

…というお話の流れです。考えさせられる物語だと思います。

「笑顔ばかりではなく、たまに拗ねることで相手は熱狂的にハマりやすくなる」など、カレンが商用のロボットとしてハマりやすいように設計されているっぽいという、心理学的な部分を併せてご紹介もできるのですが。
この漫画自体の話の良さを潰してしまいそう(笑)なので、今回そういう部分は、敢えて全スルーでいきたいと思います。


「自分が微笑み返すのは、何のためか?」

僕の結論から言うと、それは自分(タクヤ)のためです。

…あくまで推測ですが(笑)

それが自分のためだと思える根拠と、彼女が笑顔で迎えてくれる理由と思えるものを、「脳には妙なクセがある」(池谷裕二 著、扶桑社新書)という本からご紹介したいと思います。
(以下、上記書籍より引用)


We shall never know all the good that a simple smile can do.
単なる笑顔であっても想像できないほどの可能性があるのよ(著者訳)

 これはマザー・テレサの言葉です。笑顔の効果は古くから心理学的に調べられています。楽しい感情には、問題解決を容易にしたり、記憶力を高めたり、集中力を高めたりする効果があることが報告されています。笑う門には福来る――笑顔を積極的に利用することは、よりよい生き方に繋がりそうです。
 笑顔の効果として、まず社会的影響が強いことが挙げられます。「笑顔を見るのは心地よい」のは共通した心理でしょう。楽しそうに笑っている人を見るのは、よほど偏屈な気分でないかぎり、嫌な気にはならないものです。
 そしてもう一つ。笑顔は伝染します。こんな奇妙な実験が行われています。平生からあまり笑わない、どちらかといえば仏頂面で近寄りがたいタイプの人を笑わせるにはどうしたらよいかという実験です。どんなに冴えたギャグでも100%の確率で笑わせることはできません。かえって不機嫌にさせてしまうこともあるでしょう。こんなときは隣に座って、ただ根拠もなくケラケラと笑い続けるというのが、もっとも確実な方法です。
「怒れる拳、笑顔に当たらず」という諺があります。怒って拳を振り上げても、相手が笑っていると殴れない、という意味です。これこそが笑顔の力。笑顔はコミュニケーションにおける最強の武器です。

 ところが研究が進むと、笑顔は、それを見る人(笑顔の受信者)だけでなく、笑顔を作る人(笑顔の発信者)にとっても、よい心理効果があることが明らかになってきました。

(中略)

 ミュンテ博士らは、笑顔に似た表情をつくると、ドーパミン系の神経活動が変化することを見いだしています。「ドーパミン」は脳の報酬系、つまり「快楽」に関係した神経伝達物質であることを考えると、楽しいから笑顔を作るというより、笑顔を作ると楽しくなるという逆因果が、私たちの脳にはあることがわかります。

(中略)

 表情から感情を読むときも、たとえば「笑顔」をしている相手を見たら、自分もその表情をわずかに真似してみるわけです。すると、笑顔の効果で、自分の感情が楽しくなります。「真似したら、楽しくなった。ということは、相手は楽しかったのか」と、そんな推論を重ねて、私たちは相手の感情を読んでいるわけです。
(以上、上記書籍より引用)


ポイントだけ取り出して漫画のシーンに照らし合わせると、

・カレンの笑顔によって、タクヤの笑顔が引き出されている
・タクヤは笑顔になることで、楽しい気分になれる
・楽しい感情が、タクヤにいろいろなメリットを与えてくれる

という部分が最低限あることがわかります。


「カレンの笑顔で、タクヤも微笑み返す」シーンに違和感が全くないように、

『コミュニケーションのひとつとして、笑顔はとても有用』

というイメージは持っている方も多いと思いますが、

『笑顔になることで自分も楽しくなる』
『楽しい感情は、問題解決能力、集中力、記憶力を高める』

というところまで影響を及ぼしているというのは、予想外の方も多かったのではないでしょうか。


また、「表情を真似してみる」ことに関しては、その後の記述で

『表情の乏しさは、相手の感情を読みにくくなる』ことに繋がる

ということが、その後の記述に出てきます。

つまり、普段から笑顔になる機会があるということは、表情が豊かになることにつながり、その分だけ、他人とのコミュニケーションで相手の感情を理解しやすくなる、ということにも繋がっていくわけです。


ちなみにこの他にも、

「笑顔は楽しいものを見いだす力を高めてくれる」
「恐怖を感じる対象へ対応するための行動のスイッチは、『恐怖』という感情そのものではなく、『恐怖』したときの表情を作ることがスイッチになっている」

など、笑顔と併せて表情に関する面白い内容と、その根拠となる実験も、上記書籍には紹介されています。気になった方はぜひ読んでみてくださいね!


少し話は長くなりましたが、要するに

「笑顔になるのは、笑顔になった本人にも、とてもたくさんのメリットがある」

ということです。紹介したシーンでは

「相手がロボットだとわかっているのに、自分が微笑み返すのは何のためか」

とタクヤが考えるところで終わっていますが、ここまでを踏まえて考えると、

「カレンが笑うのは、タクヤが笑顔になるため」であって、
タクヤは自分が微笑み返すことに、何か「目的」を探す必要はない

…ように、自分には思えます。

「相手がロボットであるために、相手も同じ感情になっていると思えること(共感)を素直に感じられない」ことが、恐らく悩みの原因だと思うので、それはそれで確かに悩みにはなるかもしれませんが。

「微笑みかえす」という行動に関して、「何のために?」を考えるのではなく。

自分が笑顔になれたことの嬉しさを、タクヤはただ素直に受け取れば良い

のではないかな、と思います。


ちなみに人間同士でも、「笑顔で対応したのにうまくいかない」というときってありますよね?

例えば、「作り笑い」がバレたとき。

恋人や夫婦、仲の良い友人など、関係の深いパートナーが相手でも、そんなときは

「せっかく苦しい思いを隠してまで笑顔で対応してやったのに!」
「作り笑いならいらねーよ!」
…と、思わずイラッとしちゃうこともありますよね(笑)

実際、それでケンカをしてしまったことがある方も、いらっしゃるんじゃないでしょうか。

でもこれも結局、相手の目的は「相手にも笑顔になってもらいたい」だと思うのです。

そう考えると、それがもし作り笑いだとわかったとしても、その気持ちを素直に受け取って、そのときだけは笑顔で接してみる方が良いんじゃないか…と思えますよね。


そんな相手の優しさに報いるためにも。
機会があれば、ぜひこの話を思い出してみてくださいね!



記事を最後までお読み頂き、ありがとうございました!!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)

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