2014年11月14日金曜日

せっかち伯爵と時間どろぼう × 単純作業にも楽しみを見つけられること

今回は週刊少年マガジン2014年50号掲載、せっかち伯爵と時間どろぼう 00'46"「せっかち伯爵と時間刑務所」を例に、単純作業に楽しみを見つけるヒントについてご紹介したいと思います。


現在この漫画では、メインキャラクターのサンジェルマン伯爵が、とある法律の違反によって「時間刑務所」という場所に収監されています。

その刑務所からできるだけ早く出るため、サンジェルマン伯爵は模範囚となることを目指します。

その刑務所で囚人がさせられる作業は、「印刷ミスしたカードの一部にシールを貼って直す作業」。

黙々とその作業を行い、100枚程度貼り終わったところで「筋がいいじゃないか」と、共に作業をしていた同部屋の人に褒められたサンジェルマン伯爵は、こう言いました。

「なんかオレよーやく この仕事の楽しさ わかってきた気がする」

その楽しみのひとつが「シールを一発で平行に貼れた時の快感」という、やったことのない人にとってはイマイチ信じられない内容のものなのですが。

サンジェルマン伯爵は、本当に楽しそうに笑いながら、「楽しいなぁ」と言うのでした。



さて、皆さんは「単純作業」に対してどういう感想をお持ちでしょうか?

個人的な感覚ですが、「つまらない」「やる意味があまりない」という、ネガティブなものが多いのではないかと思います。「単純」という言葉が付いているくらいですし。

しかしよくよく自分のやっていることを思い返してみると、仕事でもプライベートでも、「単純作業」は意外にどこにでもあるものだ、というのがわかります。


そんなネガティブでいろいろある単純作業をもし楽しめるのであれば、それに越したことはありませんよね?

今回はそのためのヒントとなる実験から、まずご紹介したいと思います。


実験の内容は、以下の通りです。

まず実験参加者に、1時間にわたってとても単調で退屈な作業を行ってもらいます。

その後に、実験参加者を以下の3つのグループへとランダムに分けます。

1. この段階では特に何もしない人
2. この後やってくる別の参加者に対して、「この実験の課題(単調で退屈な作業)はとても面白いものだった」と説明するよう要請され、その報酬として20ドルという、比較的高価な報酬を支払われる人
3. この後やってくる別の参加者に説明するのは上と同じだが、その報酬が1ドルしか貰えない人

ちなみに、後からやってくる別の参加者というのは、実はサクラで、説明に対して「それ面白くないでしょ」など必ずはっきりと疑ってくるようになっています。

そのため2と3のグループの実験参加者は、サクラになんとか面白い作業だと思ってもらえるよう、「一定のリズムでやる楽しさが…」とか「いろいろコツがあってさ…」など、サクラに対して反論する必要があります。

そうした流れを経験した上で、全てのグループの参加者に対して、単調で退屈な作業だった課題の面白さ、実験への再参加を希望する度合いなどを確認しました。


普通に考えると、「お金をたくさん貰えた2のグループが、一番課題に対して楽しいと思えた」という結論になるのでは? と考えると思います。

しかし実験の結果、少ない報酬だった3のグループが、単純作業を「楽しかった」「またやってみたい」と一番評価することになったのです。


これはどういった条件で起こるのかというと、

・その人が感じる十分な正当性(ここでは報酬)がない
・にも関わらず、自分自身も納得できていない説明を無理矢理やらないとダメだった

というのが、ポイントになっていると考えられています。

社会心理学者のフェスティンガーによると、人には、自分自身の「行動」と「考え方や感じ方(認知)」を一致させようとし、そこに一貫性を保たせようとする傾向があるそうです。
(これを、「認知的整合性理論」といいます)

つまり、実験参加者は「つまんない」と感じていたのに「面白い!」と説明させられた結果、本当に「面白かった!」と感じるように、自分の認知を無意識に変えて対応した、ということです。

(実験と考察に関する参考書籍:「実験心理学 なぜ心理学者は人の心がわかるのか?」 齋藤勇編著 ナツメ社 より)


簡単にまとめると、人は自分の行動と、それに対する感情が一緒じゃないときには、自分の考え方を変えたり、行動を変えたりして、「楽しい行動は楽しい」「つまらない行動はつまらない」と、行動と感情を一致させたがるらしい、ということのようです。


さて、ここで話を漫画の方へと戻してみましょう。

サンジェルマン伯爵が、シールを貼るだけの単純作業を超楽しそうにやってる、というお話でした。

最初の目的は「模範囚となり早く刑務所から出ること」だったにも関わらず、彼はこの後作業に没頭したせいで、所員に話しかけられていることすら気づかず、サビ残(サービス残業)までやってしまいます。

明らかにサンジェルマン伯爵は、目的を見失うほど作業を楽しんでいるのがわかります。

その要因は描かれていないところにもあるかもしれませんが、上の実験と重ねると

・報酬(ここでは早く出ること)を忘れて没頭したこと
・シールを一発で平行に貼れた時の快感を見つけられたこと

が、ポイントになっているように思います。

それを漫画と関係なく一般的な表現にすると、

・報酬は気にしないこと
・その作業には意味や楽しさがあると考えること

となると思います。


つまらない作業ほど、「お金でも貰わないとやってられねーよ!」と思いがちですよね?

しかし結果、その考え方は楽しく作業に没頭することを阻害してしまっているようです。

報酬は願ったからといって増えるものではないです。なら、自分の感覚を変えて、そのどうしてもやらなければならない作業を、楽しいモノに変えてみてはいかがでしょうか?

どっちにしてもやらなきゃならないことなら、楽しくやれた方が良いですし、その経験がもしかしたら本当に何かの役に立つときが来るかも知れませんし!

害悪として例に上がりやすい「ゲーム」だって、いつの間にやら空間を視覚で探す能力や、動体視力の向上に繋がっているらしいですし。


もちろん、「単純作業だけをしていれば全て解決する」ということはありませんが。

どうしてもやらなければならないときには楽しんでやれるように、良ければ覚えてみてくださいね!



ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)

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