2014年9月5日金曜日

ハイキュー!! 第123話 「もう一つの憧れ」 (精神的な不安がなくなる!? まわりの役に立つことで得られる「共同体感覚」って?)

今回は週刊少年ジャンプ2014年40号掲載、ハイキュー!! 第123話 「もう一つの憧れ」のワンシーンを例に、気持ちや考え方に良い効果をもたらしてくれる「共同体感覚」についてご紹介したいと思います。


「自分はまわりの役に立てているだろうか?」

…なんて考えだすと、なにかとても不安になってしまう方もいらっしゃると思います。

「自分の価値を疑う必要はない」ということはいろいろな本にも書いてあるのですが、「そう言われてもイマイチそんなふうには思えない」という方。

そんな方は、「共同体感覚」というものを体験してみてはいかがでしょうか?

共同体感覚は「アドラー心理学」というものに出てくる重要な考え方で、この感覚を持つことが「精神的に健康とみなされる」と紹介されるほどのものです。

会社や学校などの集団のなかで「なんとなく居心地が悪い」と感じる方でも、考え方だけでも知っておくと、現状の不安の改善に役に立つと思います。

そんな「共同体感覚」というものについてと、それを手に入れるためのコツを、今回はご紹介します。


(※※ ここからネタバレを含みます。ご注意ください ※※)

まずは、ハイキュー!! 第123話 「もう一つの憧れ」のワンシーンとあらすじの紹介から。


現在、主人公の2人が所属する烏丸(からすま)高校は、春高バレー宮城県代表決定戦で和久谷南高校(わくたにみなみこうこう、通称和久南)との対戦の真っ最中です。

現在は第2セットの序盤から中盤、烏丸高校はキャプテンの澤村をケガで一時欠いているため、流れを掴んで取った第1セットから一転、歯車が少し噛み合っていないような部分があり、苦戦していました。

流れに乗り切れない主な原因のひとつが、相手が狙ってくる「ブロックアウト」に対応できていないこと。

相手は強いアタックを打つ際に、敵側のブロックに当ててボールを遠くへと飛ばし、敵側が取れないようにするのをよく狙っていました。

烏丸高校側もそれを狙われていることに気が付きますが、キャプテン澤村という戦力を欠いたことで、相手の作戦に対応できなくなっていました。

一時欠場しているキャプテンの代わりにコートに入っているのが、同じウイングスパイカーの縁下力(えんのした ちから)です。

何回かうまく拾えないながらも、彼は和久南の1番が狙ってくるブロックアウトに対して対策を考え、それをまわりに伝えます。

まわりはそれをあっさりと信頼し、試してみることになりました。

そして縁下は「これを拾えなければ、このコートで俺に価値は無い」と、気合でボールに食らい付き、なんとかブロックアウトを防ぐことに成功したのでした。
(ここまでが1つ前の122話のお話です。)

味方はそれをしっかりと繋ぎ、日向の「リバウンド」という素晴らしい判断とプレーもあり、田中のポイントへと繋ぎます。ポイントを離されチームが苦しくなったところを、全員でなんとか凌いだのでした。

そんな活躍を見せた日向と田中へ「ナイスキー!!」と声をかける縁下。そんな縁下に、

西谷夕(にしのや ゆう)が「ナイスレシーブ」と声をかけます。

西谷は、中総体でベストリベロ賞を獲得するほどの実力者であり、キャプテンである澤村からは「烏野の守護神」と呼ばれているほどのレシーブの技術を持っています。

その西谷からレシーブを褒められたことで表情を変えた縁下を見て、烏丸高校コーチの烏養は、「入ったな」と呟きます。

「自分はあくまで(キャプテン澤村の代わりに入った)代替品」
「出来上がっているコート内の空気に完全に溶け込むことはできない」

そういった気持ちがどこかにあった縁下が「自分で考え、それを仲間に伝え、実行する」ことで、感じていたネガティブな気持ちが消えたのではないかと、烏養は分析したのでした。



ここから今回のブログのテーマに入ります。

今回注目したのは、烏養コーチが「入った」と表現した、縁下の状態についてです。

「自分はあくまで代替品」「コート内の空気に溶け込めない」と考え感じていた縁下が、そういったネガティブな感情を無くし、プレーに集中できるようになったことが、漫画から読み取れます。

これはもう少し細かく要因を見てみると、

・縁下がチームに対してプレーで貢献できた(狙われていたブロックアウトを阻止できた貢献感
・好プレーを通して、この試合の中でやっと空気に溶け込めた(=所属感を感じることができた)
・信頼している味方から(レシーブのことで褒めてくれた西谷から、また提案した対策をあっさりと受け入れてくれた味方から)信頼を感じられた(=相互の信頼を感じられた)

という、それぞれ貢献感、所属感、信頼感を感じられた部分があることがわかります。


こういった家族や地域、職場など(今回はチーム)の共同体の中で感じられる、上記のような所属感、共感、信頼感、貢献感を、アドラー心理学では「共同体感覚」といいます。

そして実は、アドラー心理学ではこの「共同体感覚」の備わった人が精神的に健康とみなされるのです。

「精神的に健康」というのを、「悩みなどが無く吹っ切れた状態のこと」だと考えると、まさに今回縁下が感じた感覚はこの「共同体感覚」で、それを感じることができたことで、ネガティブな自分の感情を克服できたのだ、と考えることができるのです。


ちなみに「共同体感覚」というのは、特に「こうだ!」という定義が実はないそうなのですが(笑)

岩井俊憲さん著「マンガでやさしくわかるアドラー心理学」という本の中では、共同体感覚というのは”仲間との間の「つながりや絆の感覚」”で”精神的な健康のバロメーター”として紹介されています。
(””内が同書の引用部分です)

その点から考えても、縁下はまさに仲間とのつながりや絆を感じることができたために、ネガティブな感情部分を吹っ切り忘れることができた(精神的な健康を得ることができた)のだということが理解できます。

今回はスポーツが例になっていますが、普段の生活でも、同じように集団の中にいることで受ける悩みがあるときは、この「共同体感覚」を手に入れることで対応が可能なことも多くあります。


ではそんな「共同体感覚」は、どうすれば手に入れることができるのでしょうか?

そのポイントは、意識して「共同体感覚」という感覚を育成することです。

共同体感覚は、理論として口や文章で説明するのが難しい、と言われています。

それはまるで自転車の乗り方を教えるようなもので、失敗してもめげずに練習していくうちに、できるようになってくる性質のものだと考えられています。

何かをするときに、

「こうすることは自分の利益にはなるけど、相手のためにもなってるかな?」
「こうすることは自分と相手には利益になっているけど、もっと大きな範囲(共同体)で考えるとどうだろうか?」

といったことを意識し、より大きな共同体のためになる方向で考え行動していくことが薦められています。

烏養コーチが縁下を分析した際の「自分で考え、仲間に伝えて、実行する」ことでネガティブな考えが無くなった、というのはまさにこれで、縁下がチームのためになる方向で考えて協力を仰ぎ実行した結果だと思います。

これがもし縁下が「自分がブロックアウトを取ること」しか考えていなかったら、どうなっていたでしょうか?

・対応するために自分だけポジションを勝手に変えたり
・味方がそれをフォローする準備ができていなくてミスになり、「自分は対応した。ミスは他の人間のせいだ」と考えてしまったり
・フォローしてもらえなかったことを味方のせいにして空気をさらに悪くしてしまったり

など、悪い方向へと進む可能性はいろいろ考えられます。

「自分の行動や考えは、まわりのみんな(共同体)の利益になっているか」

その方向で考えられるかどうか、それが「共同体感覚」を得られるかどうかのカギになります。


そしてもうひとつ、今回縁下が受けた大きな影響として注目したいのが、西谷が声をかけた「ナイスレシーブ」という言葉についてです。

これは単純に「褒め言葉」として捉えることもできますが、この言葉が縁下に与えたのは、「褒められて嬉しい」という感情以外に、

・貢献感
・相互尊敬と相互信頼の感覚

の2つを与えていることにも注目できます。


まず貢献感に関して。

「貢献できた!」という感覚は、縁下が持っていた「自分はあくまで代替品」というネガティブな考えを吹き飛ばすと共に、先に説明した「共同体感覚」を手に入れるのに不可欠な要素のひとつである、ということでした。

そして次の「相互尊敬と相互信頼」に関して。

西谷は、まわりが一目置くレシーブ技術の持ち主です。それはもちろん、縁下も同じチームで目の当たりにしているため、西谷に対して尊敬と信頼の気持ちを持っていると考えられます。

そして西谷が、縁下のレシーブを褒めたこと(尊敬と信頼の念を伝えたこと)で、縁下は西谷に対して、相互尊敬・相互信頼を感じることができました。

この相互尊敬・相互信頼が、普通に褒められる以上に、縁下にポジティブなエネルギーを与えた可能性が考えられるのです。


アドラー心理学では、「勇気づけ」と呼ばれる、困難を克服するための活力を与えることに関することが、「共同体感覚」と同じく大きなテーマのひとつとして出てきます。

そして自分以外の誰かに勇気づけを行いたいとき、つまり誰かに課題を乗り越えるためのポジティブなエネルギーを与えてあげたいときには、この「相互尊敬と相互信頼」が必ず必要になるというのがアドラー心理学での考え方です。

それを踏まえると、縁下は西谷にレシーブを褒められて嬉しいという単純な喜び以上に、「相互尊敬・相互信頼」という条件がそこに入っていることで、コーチが「入った」と判断できる程の、また縁下が思わず自信に溢れた表情になってしまうほどの、ポジティブなエネルギーを得ることができたのだと思います。

(「勇気づけ」に関してはここでは長くなりすぎるため、簡単な紹介のみにしています。また機会があればご紹介したいと思います。)


ここまでを踏まえ、アドラー心理学という観点から見ると、

・縁下が「共同体感覚」を得たこと
・西谷が言った一言で、縁下が「勇気づけ」をされ、困難を克服していくためのエネルギーを得たこと

が要因となり、悪い流れを断ち切り、状況を打破できる方向へ向かうことができた、ということになります。

もし漫画の例と同じように、集団の中で「自分はまわりの役に立てていないのかも」と落ち込んでいる人がいた場合には、

・まわりの利益になるかどうかを考えて行動してもらうこと
・相互尊敬と相互信頼の中で「ナイス」と褒めてあげることが、その人の大きなエネルギーになること

を意識することで、少しでも解決に向かわせることができるかもしれません。

機会があれば、ぜひ試してみてくださいね!

(ただし、尊敬・信頼に関しては大切なのは「相互」です。何でも誰でも尊敬信頼してください、という意味ではありません。その点はご注意くださいね!)


以上、気持ちや考え方に良い効果をもたらしてくれる「共同体感覚」についてのご紹介でした。

「ハイキュー!!」、ここのところ毎週面白いと感じるのは自分だけではないと思います。

ブログで今回紹介したテーマとはズレる部分なので触れていませんが、ここ2回は日向の成長を感じられる回でもあり、困難な状況に立ち向かうチームの強い姿の回でもあり。

ただ相手も、必死に食らい付いてきていることで、さらに面白くなっているようにも思います。

試合の流れがここからさらに、どんな風になるか楽しみですね!

気になるキャラはいるけど漫画は読んでないという方は、そのキャラの成長を見逃してしまうかもしれませんよ!?

この機会にぜひ目を通してみてくださいね!



ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)

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