2014年6月22日日曜日

EとT。(えいがとてんし) Scene.3「フォーチュン・クッキー」 (みんなで同じ格好をすれば怒られなくて済む!? 「没個人化」のメリットとデメリット!)

今回は週刊少年サンデー2014年29号掲載、EとT。(えいがとてんし) Scene.3「フォーチュン・クッキー」のワンシーンを例に、まわりと同じ格好をすることで生まれる影響と、そのメリットデメリットについてご紹介したいと思います。


自分が何か悪いことをして、ひとりで呼び出されて怒られた経験はありますか?
(どうでも良いことだと思いますが、僕はめちゃくちゃあります 笑)

自分が悪いことをして怒られるのはもちろん当然だと思いますが、怒られたりするのはできるだけ「避けたい」と思ってしまうのは、普通の感覚だと思います。

実はその責任を分散できるかもしれない方法があるとしたら、知りたくありませんか?


話は少し変わって、最近のネット世界では当たり前になってきている「炎上」という言葉。

攻撃的または非難的な言葉が、まさに燃え上がる炎のように特定の個人やグループのサイトやSNSにコメントなどで大量に送られる現象ですが、中には「本当にひどい」と思ってしまう書き込みを目にすることもあります。

「なぜそこまでひどい内容を書き込むことができるのだろう?」と不思議に思った経験のある方もおられると思います。

何が要因でそんなひどいことでも書き込めるのでしょうか?


以上の2つ、どちらもポイントは「匿名性」、つまり「どこの誰だかわからなくすること」に関わりがあります。

その「匿名性」が与える心理的な影響についての1例を、今回はご紹介します。


(※※ ここからネタバレを含みます。ご注意ください ※※)

まずは、EとT。(えいがとてんし) Scene.3「フォーチュン・クッキー」のワンシーンとあらすじのご紹介から。


この漫画の主人公である榎久大五郎(えのく だいごろう)は、大好きな「映画」を仲間たちと作ることに胸を膨らませ、このたび高校に入学しました。

中学時代の映画研究部の仲間と共にクラスメイトになれた大五郎でしたが、同じクラスに琴弾桜(ことひき さくら)という少女がいることを、入学式当日に同校の友人から知ることになります。

桜は「天使のごとくかわいい。その姿を一目でも見た男は、たちまち彼女に恋してしまう…」と噂をされるほどの外見の持ち主で、入学式当日ですら、彼女のまわりには男の人だかりの輪ができてしまい、その後の彼女の行動に影響が出たほどでした。

そのため「教師が保護する」「関わった生徒に注意する」などの対策を取り、その日はなんとか収まったのですが。

次の日になると、また朝から桜のもとに男たちが大量に詰めかけているのでした。

しかし、今日はその姿が昨日とは違っている部分がありました。

なんと、全員が同じ「お面」を被っているのです。
顔から誰かを特定されて後で教師に呼び出されるのを防ぐための、彼らの対策なのでした。

しかも、入学式翌日から彼女のファンクラブができてしまっている有様です。

全員を同じお面で統一し、ファンクラブ会員カードまであることを自慢げに誇る彼らでしたが、

その会員カードから個人が特定されてしまい、彼らは一目散に逃げていくのでした。



ここから、今回のブログのテーマに入ります。

注目したのは、生徒たちが外見を「お面」という顔のわからない状況に統一し注意や罰を逃れようとしたことと、名前が割れたことで全員が「まずい」と思い逃げて行ったところです。

実は、上記の状況と同じように顔と名前に関係する有名な心理学の実験があるのです。

今回はそれをまずご紹介します。


この実験は、アメリカ心理学者であるジンバルドーが行った実験です。

4人1組にした実験参加者に目と口の部分だけ小さな穴の開いた実験着を着せて、どこの誰かわからない状態にします。

そのうえで2人だけ、名札をつけて名前がわかる状態にします。

これにより外見は変わらず個人を特定できないのですが、名札を付けた2人だけは名前により匿名性のない状態(=個人を特定できる状態)になりました。

次に、4人全員に2種類の映像を見てもらいます。
映像の内容は、片方はけなげで好ましいイメージを与える女性が、もう片方は自己中心的で不快なイメージを与える女性が、それぞれ実験を仕切る側の人との面接を行っているというものです。

映像が見終わったところで1人づつ別々にボックスに入れ、「これからマジックミラーの向こう側に居る女性2人に対して電気ショックを与える実験を行う」と説明します。

実験参加者が行う作業は、ランプが点灯したら電気ショックを相手に与え、ランプが消えるまで電気ショックを与え続けるというものです。

そしてその作業に追加情報として、

・マジックミラー向こうにいる女性が先ほど見た映像の、面接を受けた女性であること
・電気ショックを与えたことでマジックミラー向こうの女性が苦しむ姿を見て、もし可哀想だと思えば、他の3人に気付かれないように自分だけ押すのを止めても良い

ということも併せて伝えて、実験を行います。


実験の結果、匿名性のあるグループ(名札をつけていないグループ)の方が、匿名性のないグループ(名札をつけているグループ)に比べてより長く電気ショックを与えており、しかも印象の悪い女性に対して、印象の良い女性に対してよりも長くショックを与えていた、ということがわかりました。


この結果から、匿名性はその人をより攻撃的にするということがわかり、その要因は「どこの誰だかわからなくなることで責任の所在があやふやな状態になる」ことだと考えられています。

つまり、複数人で行っている攻撃で、かつ攻撃している人がどこの誰だかわからない状態なら、普段やれないことも強気でやれるような状態になるということです。

ちなみに、どこの誰だかわからない状態を「没個性化」と呼び、普段やれないことも強気でやれるような状態になることを「没個性化現象」と呼びます。


この「没個性化現象」でもっとも例として挙げられやすいのが、先にご紹介した「炎上」です。

自分が特定されにくい状態だからこそ、他の人に対してとても攻撃的なコメントや内容を書き込みやすい状態になっているのです。

「こんなひどい書き込みができる人って一体どんな人なんだろう?」と実際に会ってみると、意外に普通の人でびっくりした、という話もよくあるそうです。

もちろん、普段は普通の人なのにネットではすごく過激な内容の書き込みをしている人だった、ということもありえます。

この例は、普通にふるまっている人でも匿名性のある状態だと攻撃的になる可能性があるというのが、わかって頂けやすいと思います。


今回の漫画の例を見てみても、

・同じお面を使うことで匿名性のある状態になっていて、「誰がやったかバレると先生に怒られる」ということがわかっている状況でも、強気に行動する(桜にアプローチをかける)ことができている
・ファンクラブ会員カードの名前により匿名性が無くなることが分かった途端、教師から逃げている

ということで、「没個性化」の影響がしっかりと出ていることがわかります。


ちなみに少し話は逸れますが、学校や仕事などで着る「制服」にも没個性化が働きます。

例えばこの漫画の例で言えば、主人公は「榎久大五郎」という個人ですが、制服を着ていることで第三者から見れば「華峰高等学校」の学生という、大勢いる中の1人ということになります。

そうすることで、もし大五郎が悪いことをしても、個人ではなく「華峰高等学校」という大勢の中の一人がやったこととして世間的には処理されやすいという悪い面があります。

しかし、逆に良い面もあります。

それは「管理がとてもしやすくなること」です。

一人一人の個性が消えることによって、管理する側がとてもスムーズに管理を行えるようになるのです。

例えば、病院で入院している患者さんに病院側で用意した服を着てもらっている場合です。

そういった病院はたくさんあり、その服を着てもらう理由として「病院側が検査などの作業を行いやすくするため」というものがおそらく一番の理由だと思いますが、これには「没個性化」の面もあります。

入院してくる人は、「お金持ちの人」「地位の高い人」「功績のある人」やその逆の方々など、様々なタイプの人たちです。

その中で一人一人が個性を出すことを許してそれに対応するとなると、病院側はとても管理できるものではありません。

なので患者統一で同じ服を着てもらい、入院患者の一人だということを理解してもらうことで、どんな人でも平等に患者になりきってもらう、という意味もあるようです。


普段の生活で「全員同じものを」ということがあれば、それにより少ない影響だとしても「没個性化」の影響があると考えられます。

それによって「普段できないことができるようになる」というのはとても大きなことですが、「良い面も悪い面もある」ということを覚えておくことで、自分のしていることが行き過ぎないように、まわりの許容範囲を超えないように、自分で歯止めをかけることができやすくなると思います。

没個性化、この機会にぜひ覚えてみてくださいね!


以上、同じ格好をすることで生まれる影響とそのメリットデメリットについてのご紹介でした。


サンデーにて始まりました新連載、「EとT。(えいがとてんし)」、新連載開始時の本誌表紙でのうたい文句は「映画×青春×美少女」です。

「作者の猫砂一平さんってどこかで聞いたことあるな…でも何で知ったのか思い出せない…」

と思って調べてみたら、ライトノベル「末代まで!」の作者(かつイラストレーター)で知った方だと思い出して、驚愕しました。

漫画も小説もプロのレベルでできるってすごいですよね! 尊敬します。


現在本編は、主人公の映画熱が今のところ桜に(どころかその幼馴染にすら)全く響いていない感じですが、互いを認知しあうところまで来ています。

しかし本筋にはまだまだ入っていない雰囲気もありますので、気になった方、今から読み始めてもまだ簡単に追いつけると思います!

ぜひ一度、目を通してみてくださいね!



ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)

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