2014年6月4日水曜日

磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~ 第五十九話「火消しと武士で候」 (「悪いところばかり見てる」ことには意外に気づかない? 「否定的ステレオタイプ」の怖さ!)

今回は週刊少年ジャンプ2014年27号掲載、磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~ 第五十九話「火消しと武士で候」を例に、悪いところばかり見ていることには意外に気づかない心理についてご紹介したいと思います。


個人の趣味趣向で、どうしても好き嫌いはあると思います。

そしてその好き嫌いについて話をする機会も、意外と多いと思います。自分の好きなもの嫌いなもの、相手の好きなもの嫌いなもの、普段の雑談にいろいろ出てきますよね!

そんな好き嫌いの話のときに、「○○だから嫌い」といった、きちんとした理由を持って嫌いという意見が出てくることがあります。

これは、自分では冷静かつ公正に判断し、理論的にも問題がないと思って発言していると思います。

しかし実は、その理由も含めて、いつの間にか偏った意見を言ってしまっている可能性があることをご存知ですか?

今回は意識せずにそうしてしまう心理と、そうしないための対策方法をご紹介します。


(※※ ここからネタバレを含みます。ご注意ください ※※)

まずは、磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~ 第五十九話「火消しと武士で候」のあらすじから。


江戸時代の江戸に住む、この漫画の主人公の磯部磯兵衛(いそべ いそべえ)は、友人の中島 襄(なかじま じょう)と「火消し」について雑談を、行きつけの団子屋でしていました。

そしてその雑談をしている隣の席にたまたま火消しの人達がおり、自分達のことを話していること気付き、こっそりと耳を傾けていました。

中島は火消しが江戸っ子の象徴であることから「かっこいい」と評価しますが、しかし磯兵衛は「武士の方がカッコよくない?」と火消しを否定し始めます。

それに対して中島は、火消しの良い部分を伝えようとしますが、磯兵衛はさらにさまざまな理由を挙げ、武士の方がカッコいいことをアピールします。
(画像が2列になっている方は左→右の順です。)

そしてあまりに続く否定の数々に、火消しの人達はついにキレて雑談に乱入します。

しかしちょうどそこへ火事の知らせが入ってきたことで、彼らは「こんなことしてる場合じゃねぇ!」と磯兵衛を放置し、火事の現場へと向かうのでした。

火消しの現場まで来て状況を目の当たりにする磯兵衛に対して中島は「火消しってすごいでしょ?」と同意を求めますが、「すごいのは認めるが しかし武士に比べれば…」と磯兵衛はまだ続けようとします。

そんな磯兵衛の顔に、火片が飛んできて当たります。
体で火の凄さを実際に体験し、火消しの本当の凄さを知る機会だったにも関わらず、自分の身の大切さからその凄さを感じることは無く、中島に必死に水を求める、かっこ悪い磯兵衛でした。



ここから、今回のブログのテーマに入ります。

今回注目したポイントは、「火消しよりも武士の方がカッコよい」というイメージを持っている磯兵衛が火消しに対しては否定的な意見を続けたところです。

磯兵衛自体が「とりあえず否定しとくタイプ」のキャラなのでそこが原因というのもありますが、さまざまに出てくる否定の中には「ホントにそう?」と思えるようなものが、さも彼からすると当たり前であるかのように、口から出てきていますよね。

しかし、本人はとても論理的に話をしているつもりの様子です。


こういったことって、意外と身近でもあると思うのですがいかがでしょうか?

自分が贔屓にしていない人やグループなどに対しては、思わず否定的な意見を言ってしまいがちです。しかも、自分からするとそんなに詳しいジャンルではないにも関わらず、実に理に適った説明ができていると思い込んでしまう。

どうして、こういったことが起こるのでしょうか?

原因は、「ステレオタイプ」と「確証バイアス」という2つが否定的に重なっていることです。


「ステレオタイプ」というのは、「○○の人はだいたいこんな感じ」という、パターン化したものの見方のことです。

例えば、「イタリア人は陽気で情熱的」「ドイツ人は勤勉でビールが好き」などです。人種に関わらず、今回のように職業や外見、所属しているグループによって、そういうパターン化した当てはめてしまいがちなイメージのことです。

「確証バイアス」というのは、きっとそうだと思う証拠(確証)ばかりに目が行ってしまい、実際の全体像を見誤ってしまう(バイアス)ことです。

先に例に出したイタリア人、ドイツ人のイメージを例にするのであれば、陽気に振る舞い情熱的に女性を口説く外国人男性を見て、その場にいる人から「あの人はイタリア人なんだ」と聞いた瞬間、「やっぱりイタリア人ってそうなんだ!」と思ってしまう現象のことを、「確証バイアス」と言います。


この2つが「否定的」に重なると、今回の漫画の例に出したようなことが起こります。

磯兵衛は「武士の方がカッコよくて、火消しの方がカッコ悪い」と思っています。
(というか、たぶん武士が一番でそれ以外は武士には及ばないと思っていると思います。)

そのステレオタイプを持ったまま普段の生活をしていると、物の見方が随分と変わるようになります。

漫画で「武士の方がカッコよくて、火消しの方がカッコ悪い」理由として磯兵衛が挙げたのは下の6つです。

・武士は戦うし、己との戦いでもある
・孤独で居られる強さがある
・常に主君を守るため己を磨くために生きている

・火消しは、火を消すだけ
・大勢集まってなんとかしようとしているのは弱い人達の集まりだから
・火事がないときはただのヒマ人

普通に考えれば、
・孤独なのは強いからではない可能性もありますし
・そもそも孤独でない武士も探せばいるでしょうし
・普段別の仕事に取り掛かっていて火事が起きたときは、火消しの人に対しては磯兵衛はその人が火消しとは気づかないでしょうし。

などなど、全てにおいて磯兵衛の「武士の方がカッコよくて、火消しの方がカッコ悪い」という考え方があるからこそ、磯兵衛からは他の人と違う見え方をした可能性があることがわかります。

しかし全て、磯兵衛はしっかりと理論的に話しているつもりになっています。


とても怖いことですが、普段の生活の際でも意外にこういったことは簡単に起こっています。過去の自分や他人の会話を思い出してみると、思い当たる節のある方が多いのではないでしょうか?


では、否定的な「ステレオタイプ」と「確証バイアス」に引っ張られないようにするには、何が必要なのでしょうか?

さまざまな工夫があると思いますが、個人的にオススメしたいのは「反証」という考え方です。


「反証」というのは論理的に考えるために必要なもので、「正しい」と思える情報や証拠だけでなく、「それ、本当は違うんじゃない?」という情報や証拠も集めて検証することです。

例えば「イタリア人は陽気で情熱的」という情報が本当なのかどうかをしっかりと確かめるためには、「陽気でなく情熱的でもないイタリア人がいることは絶対にあり得ないことだ」ということも、ちゃんと確かめないとダメだということです。

個人的に確かめたことがないのではっきりとは言えませんが、きっと陽気ではなく情熱的でもないイタリア人の方はいらっしゃると思うので、「絶対にイタリア人は陽気で情熱的だ」とは言い切れなくなるわけです。

しかし、実際の生活では目の前で陽気で情熱的なイタリア人を見ただけで「やっぱりみんなそうなのかな!」と思ってしまうのです。

今回の漫画の例では、中島がしっかりと反論してくれていることからもわかる通り火消しの方がカッコ悪いということも言い切れないわけですが、磯兵衛は聞く耳持たず、「ステレオタイプ」と「確証バイアス」に引っ張られた考え方から抜け出る雰囲気はありません。

まあ、そういうキャラですが(笑)


ここまでで「反証」の必要性は理解して頂けたと思いますが、ちなみに日常生活の全てで反証を行うのは、とても現実的ではありません。そんなことをしていると気持ちが疲れ切ってしまいます。

しかし何も対策をしないことで、否定的ステレオタイプによって新しいものとの出会いの機会が減ったり失敗になってしまったりするのも、良いことだとは思えません。

なので、特に理由なく「なんとなく嫌だなあ」という気持ちだけで否定しそうになったときだけ、この知識を使ってみてください。

いろんなものに対して、今まで気づかなかった魅力に気付けるきっかけを手に入れることができると思います。

ぜひ試してみてくださいね!


以上、悪いところばかり見ていることには意外に気づかない心理についてのご紹介でした。

唐突ですが、磯兵衛はいろいろな面で本当にすごくダメなキャラだと思います。ホント、ダメですよね(笑)

なので、典型的な反面教師としてはすごく参考になるとも思っています。

ここまでダメな主人公って、そういえば最近の作品ではあんまりいなかったような気がします。

それもあってか連載開始時はジャンプにこの作品が載っていることにものすごく違和感を感じましたが、「処す?処す?」のネタから一気にファンになりました!

「処す?」はネットでもパロディでネタにされていて面白いので、気になる方は検索してみてください。

磯兵衛はダメだけど、憎めないキャラで面白いと思います。

良ければ一度本編も目を通してみてくださいね!



ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

(※ 掲載した画像は紹介作品からの引用で、著作権は作者および出版社にあります)
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